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iPS細胞を使って癌の個別化医療を実現へ

サイアス株式会社

近年の科学の発展により、がん免疫療法を含む様々なながん治療薬が患者さんの福音となっています。サイアスは、iPS細胞技術に免疫学と発生学を組み合わせ、新たなiPS細胞治療法を開発しています。京都iCAPは、サイアスの新規iPS細胞医療が、がん患者さんの新たな治療手段となる事を願っています。

京都大学イノベーションキャピタル株式会社 投資担当者より

iPS細胞技術を使って、癌の個別化医療を実現する。2017年6月に京都大学イノベーションキャピタル(京都iCAP)の支援を受け始めたサイアス株式会社では、そんな事業の展開を目指している。実は、腫瘍の増大を抑制するキラーT細胞は、慢性的に刺激に晒されると腫瘍を抑制する力を失ってしまう。そこで、患者の体から採取したキラーT細胞を一度iPS細胞に初期化し、再度腫瘍に対する殺傷性のあるキラーT細胞として分化させる。これを患者の体に投与することで自家キラーT細胞による免疫治療が実現できる可能性があるというわけだ。臨床開発に向けて着実にフェーズを進める同社の歩みを代表取締役の等泰道氏と五ノ坪良輔氏に聞いた。
(聞き手:伊藤瑳恵、2020年8月取材)

夢だった「免疫療法の実現」

社長に就任されるまでの、等さんのキャリアを教えてください。

等ー 熊本大学医学部を卒業後、大学院に進学して免疫学を学びました。その後、東京大学医科学研究所の助手、スタンフォード大学への留学を経て、スタンフォード大学でお世話になったボスが起業した創薬ベンチャーに入社。低分子を使った癌の創薬の仕事を行っていました。当初は2~3年だけ在籍するつもりだったのですが、ボスと馬が合ったこともあり、いつの間にか20年近くの時が経っていました。その後、京都iCAPを通じてサイアスの話をいただき、2017年6月から代表取締役に就任しました。

大学院生の頃から免疫学を専攻されていたのですね。なぜ興味を持たれたのですか。

等ー 私が学生の頃は、癌の治療といえば広範囲切除が主流でした。広範囲切除をすれば、多くの場合、癌からは解放されますが、それ以降の生活の質(QOL)が低下する人も少なくありません。例えば、若年層で発症するケースが多い骨肉腫が肩にできた場合は、肩から先を切断するという治療をしていました。そんな実情を目の当たりにした頃、ちょうど免疫細胞が注目され始めたのです。免疫細胞を使えば広範囲切除をしなくても癌が治療できるのではないかと思い、大きな関心を抱きました。

サイアスへの参画を決意した理由を教えてください。

等ー サイアスが目指す事業は、免疫細胞で癌を治すこと。私が学生時代に夢見たことそのものでした。ずっとやりたかった癌の治療に携われることにご縁を感じ、迷うことなく就任を決意しました。

迷いはなかったのですね。京都iCAPからはどのような支援を受けましたか。

等ー 会社としては一からのスタートでした。特に事業構想を練ることについては、私の専門ではなかったため、キャピタリストの皆さんが中心となって事業計画を立ててくださいました。このほか、公的資金への応募やライセンス関連の支援もお願いしました。既に大学内部との信頼関係が築けている京都iCAPの存在は大きかった。今振り返っても、京都iCAPのような支援を受け入れられなければ、国内で大学のシーズを産業化することは難しいのではないかと思うほどです。

等代表取締役CEO/CTO

iPS細胞を使って10割バッターを目指す

これから展開される事業について教えてください。

等ー 私たちは、患者ごとに個別化した癌治療を実現したいと思っています。人間の体には、癌に対する免疫が備わっているものです。中でも、癌細胞を一番強力に殺傷するのが、キラーT細胞といわれています。ただし、癌患者の体では、長年癌と闘ってきたキラーT細胞が少なくなってしまったり、疲弊して細胞傷害性が低下してしまったりします。そこで、患者の体からキラーT細胞を単離して、一度iPS細胞に変え、そこからもう一度元気なキラーT細胞を分化させて患者の体に投与する――という免疫療法の実用化を検討しています。

患者のキラーT細胞を使うことにどんな利点がありますか。

等ー 他人の細胞を使うと拒絶反応が起きる可能性がありますが、自分自身の細胞を使えばそのような恐れはありません。そのため、体内に長く留まって長期奏功も期待できます。また、患者の細胞を使って個別化することにも利点があります。癌の免疫遺伝性や遺伝子変異などは個人によって異なるため、同じ薬で全員を同じように治療するのは難しいのです。そういう意味でも、患者の細胞を使った治療の意義は大きく、実現できれば高い治療効果が得られると期待しています。こうした個別化医療は、ベンチャー起業だからこそ実現できることだと思います。

現在の進捗状況を教えてください。

等- キラーT細胞を患者の体から単離し、iPS細胞に初期化した後、再びキラーT細胞に分化する――というのが、弊社の創業者である京都大学iPS細胞研究所の金子新准教授の研究成果で、弊社の基盤技術となっています。ただ、大学の技術は、現象が確かめられれば、“3割バッター”でも良い。これに対して、事業化するためには、ほぼ“10割バッター”を目指さなくてはいけません。現在は、3割バッターを10割バッターにするための最適化を試みています。細胞製造プロトコルが完成次第、非臨床・臨床フェーズに進めたいです。

ラボの様子

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