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【メディア掲載】「京都大学の知」の社会還元を加速するための京大オリジナルの取り組み

京大オリジナル㈱代表取締役社長山田の記事がJST産官学連携ジャーナルで取り上げられました。

京大オリジナル株式会社は京都大学の100%出資で2018年6月に新たに設立された会社であり、京都大学の研究成果を活用したコンサルティング事業と研修・講習事業を主たる柱として事業を展開している。産官学連携の促進には、大学の論理と企業の価値観を理解できる人材の育成、大学の「知」を社会に還元できるシステムの構築が課題であるが、その解決に向けて、弊社では、大学の知を社会還元するためのインターフェースとして機能することを目標に活動を行っている。
京大オリジナル株式会社 代表取締役社長 山田 幸男

京大オリジナル株式会社の設立の背景・経緯

京大オリジナル株式会社は、国立大学法人京都大学が2017年6月に文部科学省より指定国立大学法人に指定され、京都大学の研究成果を活用する事業(特定研究成果活用事業)を実施する株式会社への出資が可能となったことを受け、新たに設立された京都大学の完全子会社である。

京都大学は1897年の創設以来、「自重自敬の精神」に基づいた自由の学風のもと、創造的な学問の世界を切り開いてきた長い歴史を持つ。京都大学の意義は独創的な研究と多種多彩な学問によって社会、ひいては人に貢献していくことにあり、ユニークな人材や将来のリーダーを養成し、広く社会へ輩出していこうとしている。

指定国立大学法人として京都大学が取り組む社会連携は、新しい国際的産学連携の仕組みの構築、アジア・アフリカ地域での包括的な国際連携、そして京都学派として世界に大きな影響力を与えてきた人文・社会科学の未来世界への発信に重点を置いてきた。これらの取り組みをさらに進め、京都大学がWINDOW構想に掲げる「世界や社会に開く窓」として、京大オリジナル株式会社は貢献していく。

京大オリジナル株式会社の事業概要

弊社は、大学において創出された「知」を社会につなげることにより、大学の知の「価値の最大化」と「収益の還元」を行い、教育研究活動を活性化させることを目的としたコンサルティング事業と研修・講習事業を主たる柱として事業を展開する。

これらの事業活動を通じて、社会とのインターフェース機能の拡充を図るため、専門的スキルを持つスタッフの確保による高い専門性と機動性、柔軟性を最大限に生かす。また、これら事業の源泉となる大学の「知」を発掘・活用するため、京都大学との緊密な連携を図り、京都大学産官学連携本部やオープンイノベーション機構、弊社と同じく京都大学の関連会社である株式会社TLO京都および京都大学イノベーションキャピタル株式会社などとの有機的な連携体制を構築しており、そのことが弊社の総合的な産学連携コンサルテーションを可能にしている。

関連会社の活動をもっと外部に発信していくために、関連会社で連携して、京都大学産学連携情報発信プラットフォームPhiloを新たに開始、様々な情報を発信している。

京大オリジナル株式会社の具体的な活動内容・成果等

コンサルティングサービスは、京大の教員との連携を希望される方々の意図を汲み取り、企画立案、実行支援を行う。加えて、必要に応じ、教員との連携の前工程・後工程に対するコンサルティング(新規事業戦略構築支援や組織改革支援等)も実施している。研究者と企業の間の One-Stop Shop として効果的な連携構築を目指す。2020年度はテックフォーラムと呼ぶマッチングイベントや会員制研究会サービスのオンライン化を遂行し、59件のコンサルティングおよび関連サービスを実施した。

一方、研修・講習サービスは、研究成果を活用した研修・講習、教員を講師とした社会への研修・講習をプロデュースする。カリキュラムは多岐にわたり、企業経営者や管理職向けリーダー研修や専門講座、一般向け教養講座、京大らしさが伝わる変人講座など多彩であり、それらを網羅的に実施するために京都大学OPEN ACADEMYというスクール事業を展開している。具体的には、京都大学エグゼクティブ・リーダーシップ・プログラム(ELP)、「人を知る」人工知能講座、京大MBA短期集中講座など従来の特定層向け専門講座についてもオンラインを組み合わせながら実施した。また、当期よりELPに続くエグゼクティブ向けプログラムとして「京都大学エグゼクティブ・ビジネス・プログラム(EBP)」を開講した。一般向け講座では、「生物学教室オンライン」「経済学教室オンライン」「人文学教室オンライン」など教室シリーズの充実を図った。2020年度はコロナ禍で苦戦したものの、対面実施からオンラインも組み合わせた実施に切り替えたことにより、約40種類の講座を実施した。

産学連携における課題とは?

大学と企業の連携は簡単ではない。共同研究構築のディスカッションでも考え方や目的、手法のズレに直面する。まず、大学にとって有望な研究成果は企業の目には製品化や実効性の観点が足りないように映る。一因として大学と企業をつなぐ人材不足にある。大学と企業では価値観や論理が異なっており、双方の立場を経験しないと本当の意味での橋渡しは難しい。私自身も日々勉強の毎日である。今日でも新卒入社した会社から転職しない人材は一定数いて転職しても会社間を変わる場合が多く、大学-企業の移動は非常に少ない。

産学連携は日本より米国で先行して活発化し、その理論が日本に導入された。ただ、米国では大学-企業の関係性はフラットで行き来する研究者・職員は多い。ラボごと、部門ごと移動する場合もある。当然ながら彼らは大学の事も企業の事もよく理解している。こうした中で生まれた産学連携のプロセスは、そのまま日本にはフィットしない。大学の論理と企業の価値観を理解できる人材が産官学連携に飛び込める環境を作らねばならない。

もう一つ重要なのは大学の「知」を社会に還元できるシステムの構築にある。国立大学法人の枠組みでは実施が困難な活動が、会社であれば可能になる場合がある。例えば研究者が講義する研修・講習においても、会社で企画すれば学際的、多角的なテーマでの立案が可能になり、研究者へも新しい研究の場を提供できることになる。また、研究会などにおいても専門スタッフが運営することでスムーズな実施が可能になり、一方教員へ研究や教育に専念しやすい環境を提供できる。こうした観点から弊社では様々なフォーラム、ユニットの運営を通じて社会への貢献と大学の研究推進を図っている。

今後の展望について

企業との接点を強化しさらなる産官学連携活動を促進するために、首都圏、特に東京での活動強化が必要であることから、2017年7月に京都地域の大学と連携し、新丸の内ビルティング内の京都大学東京オフィスの隣地に、京都アカデミアフォーラムin 丸の内を開設し、京都大学を含めて京都域内の9大学と連携して京都の文化・芸術・科学について「学術面から情報発信をする場」としての活用を目指している。

京大オリジナルは京大構内にありながら独立した企業である。社員は様々な場で様々なキャリアを積んできている。この特色を生かし大学の知を社会還元するためのインターフェースとして、大学と企業の間に立ち道筋を作れれば大きな喜びである。

未来を模索している企業の皆さま、
京都大学にぜひご相談ください!