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京大Edu.HR講座~効果的な研修を企画し、仲間の成長を支える方法論を学ぶ~

京都大学大学院教育学研究科 教育実践コラボレーション・センター並びに京大オリジナル株式会社では、「教育方法学を活用した、人事・人材開発担当者向けの研修講座(京大Edu.HR講座)」を開講しております。今回は、その開講経緯と今年度の活動結果などについてレポートします。

企画背景|教育方法学の知見を世に広め、企業の人材研修をより良いものとする

———社会における能力観や評価観に一石を投じたいと考え、Edu.HR講座を企画に着手しました。———そう語るのは西岡教授だ。

京大Edu.HR講座では「効果的な研修を企画し、仲間の成長を支える方法論を学ぶ」というテーマを掲げ、企業の人事・人材開発担当者向けに講義を行っている。参加者が学ぶ“京大の知”は、教育方法学のうちカリキュラム設計(研修設計)に関する方法論である。西岡 加名恵 教授(京都大学大学院教育学研究科)と石井 英真 准教授(同研究科)から、「逆向き設計」やパフォーマンス評価といった、研修設計に重要な概念を参加者は学んでいく。

この講座の特徴は、「研修設計の担当者が、改めてその設計方法や評価方法を大学教員から学ぶ」ことだ。そして、その特徴の源となるのが、西岡教授・石井准教授の専門性である。両教員はもともと「京都大学大学院教育学研究科 E.FORUM※1」での活動など、教育改革を推進するスクールリーダー(学校管理職・研究主任など)の育成に熱意を注いでいる教員だ。E.FORUMでは主に学校教員向けに教育方法論の知見を提供しているが、もとを辿れば、パフォーマンス評価は職業教育で用いられていたものとのこと。つまり、社会人教育と相性の良い方法論なのだ。そのような、“京大の知”を企業の研修設計に活かしてもらうべく、2023年から企画の議論が繰り返され、2024年7月に本講座は開講を迎えたのである。
※1:https://e-forum.educ.kyoto-u.ac.jp/

実施概要|参加者が取り組む課題は、自社研修をリデザインし、企画提案のプレゼンテーションを行なうこと

1期生として、人材開発に熱意をもつ企業15社が本講座に参加した。参加者は“自社の研修をリデザインするため”に、7月から10月にかけて、全7回の講座に参加し、講義やグループワークに取り組んでいく。第1回は京都、第2回は東京で開催され、第3回~第6回はオンラインで開催された。各回での学びを通じて、参加者は自社の研修をリデザイン(または新設)していく。

———この研修の組み立て自体が研修設計の一つのモデルになればと考え、Edu.HR講座の設計を行ないました。——— そう語るのは石井准教授だ

教員たちが企画を練ったとは言え、蓋を開けてみないと、どのような参加者が来るかはわからない。各回のアンケートで理解度を評価しながら、毎回の講義内容をリアルタイムで修正していく。フィードバックの回数を増やすなどの修正を加え、参加者全員が良い研修を設計できるように、講義の裏側でも教員たちの議論が続けられた。

———受講者の皆さんが研修内容を真正面から受け止めてくださり、それぞれに素敵な研修を設計してくださったのが嬉しかったです。———と、西岡教授は笑みを浮かべる

最終回は学びの集大成として、参加者による“リデザインした研修”の企画提案(プレゼンテーション)が京都大学にて行われた。筆者も最終回に同席したが、すべての参加者のプレゼンテーションが示唆に富み、それぞれ良い研修が企画されていて、とても勉強になるものだったと感じている。

開催後のアンケートでは、「目標(本質的な問い、永続的理解)に立ち返ってブラッシュアップする『逆向き設計』論の考え方はとても参考になった。」「講師、事務局陣もワンチームになってサポートをしてくれて良かった。」「検討した新入社員研修の件は実際に取り入れたいと思います。」「京大のことが、更に大好きになった期間でもございました。」などといったポジティブなコメントが多く、総合的な満足度も高かった※2。一方で、「もう1回程度の対面講義があっても良い」「初見の情報が多く、頭から煙が出ました。」と改善を求める声もあり、来年度以降の開講にあたっては、引き続き企画を練り直していく必要がある。
※2:満足度の5段階評価のうち、「とても満足」「やや満足」の合計回答率100%

今後|京大Edu.HR講座自体もリデザインを続け、さらなる学びを企業に届ける。

———日本社会にとって重要だけど、意外と学ぶ場所が少ない。京大Edu.HR講座では、そんなテーマに取り組みました。——— そう語るのは、本講座の企画・運営・TA(ティーチング・アシスタント)に携わった夏目氏(京大オリジナル株式会社)だ。

———日本の人口が減少する中、一人ひとりの“学び”が、今よりも一層大切になると考えています。その“学び”を支える人たちは、企業の中で言えば人事部や人材開発の担当者の皆様です。『人事部・人材開発の皆様に“学び”を提供することで、その向こう側にいる従業員一人ひとりの“学び”の効果を高めることができないか?』と、そのような話を先生方とディスカッションし、本講座を先生方と企画しました。今後も皆様に一層良いものをお届けできるよう、先生方とディスカッションを続けていこうと考えています。———と夏目氏は続ける。

今年度の取り組みを踏まえて、京大Edu.HR講座自体をリデザインすることで、さらに良質な講座を展開していく予定とのこと。また、本講座のフレームワークを活用し、例えばマーケティング研修やマネジメント研修の設計図を作成することで、どの企業も一足飛びに自社研修をリデザインできるような形式も検討中だ。さらに、「再度、参加者同士で集まりたい」という声も多数あったことから、本講座を中心に横のつながりも強めていく予定だ。

確かに、人口減少の中、一人ひとりの学びの効果を高めることは、今後の日本社会にとって重要なことのように思える。本講座を通じて、“京大の知”がますます社会実装され、企業の人的資本が拡大していくことを期待する。
執筆|中澤 舟


以上、京大Edu.HR講座の活動をレポートしました。いかがでしたでしょうか。興味を持たれましたら、ぜひ皆さまも本講座の参加を検討してみてください。
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京大オリジナル株式会社

京都大学大学院 教育学研究科 教授 西岡 加名恵
教育方法学(カリキュラム論、教育評価論)パフォーマンス評価:パフォーマンス課題、ルーブリック、ポートフォリオ評価法、アメリカやイギリスの調査、日本の学校の先生方と共同研究開発。大学では教員養成の仕事も担当(教育実習指導など)京都大学大学院教育学研究科E.FORUMの講師と運営を担当。 https://e-forum.educ.kyoto-u.ac.jp/

京都大学大学院 教育学研究科 准教授 石井 英真
教育方法学(カリキュラム論、教育評価論、教師教育論)タキソノミー(目標分類学)、コンピテンシー、リフレクションとアンラーン英米のカリキュラム研究、日本の授業研究史、学校現場の授業改善・学校改革支援大学では教員養成の仕事も担当(教育実習指導など)京都大学大学院教育学研究科E.FORUMの講師と運営を担当。 https://e-forum.educ.kyoto-u.ac.jp/

プロジェクトに従事した産学連携担当者
京大オリジナル株式会社 ソリューションデザイン事業部
夏目 典明
京都大学 理学研究科 宇宙物理学専攻 卒業/野村総合研究所 コンサルティング事業本部 入社/京大オリジナル コンサルティング事業部 入社/文献ラボ 設立(代表取締役)。京大Edu.HR講座では企画・運営、ティーチングアシスタントを担当。

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