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【インタビュー】京大発アントレプレナーに聞く。企業および京大に求める支援

京大オリジナル株式会社では、京大発スタートアップの育成や支援につながる新規事業の展開を模索しており、いくつかのプロジェクトが進行中です。

今回は、京都大学に在籍しながらスタートアップを立ち上げた理学研究科修士2年の山本 智一さんと、京都大学の特定研究員として勤務しながら、スタートアップ立ち上げに向けた活動をしている奥田 結衣 先生をお招きし、京大発アントレプレナーが、京大および産業界に求める支援や作りたい未来について伺いました。(インタビュアー:京大オリジナル 久保園 遥)

(写真左から)京大オリジナル株式会社 ソリューションデザイン部 久保園 遥、京都大学 森林科学専攻 複合材料化学分野 特定研究員 博士(理学) 奥田 結衣、株式会社whicker代表取締役 / 京都大学 理学研究科 修士2年 山本 智一

二人の起業のリアルを紹介した記事はこちら

https://philo.saci.kyoto-u.ac.jp/2024/12/kuo24/

京大発アントレプレナーが企業に求める支援とは

久保園 Philo読者である企業の方に、協力いただきたい支援はありますか?

山本 シンプルに2点です。僕らは、“世代間交流”をテーマにしていて、現在、京大と共同研究をしています。このテーマについて一緒に研究してくれたり、資金的な援助をしてもらったりしたいのが一つ。二つ目としては、世代間交流を広めるために、SNS等を強化しているので、そういう部分のスポンサーになってくれたらうれしいですね。

久保園 これまで「まごとも」は、企業から資金面の援助を受けたり、企業と業務提携したりしていますか?

山本 いえ、ないですね。補助金・助成金などはいただいていますが、あとは特に。スポンサーも集まればいいなと思ってはいますが、自力で工面している部分が多く、融資なども借りていません。ただ、ベンチャーキャピタルからの資金調達などは、今後検討していきたいと考えています。

久保園 ありがとうございます。奥田先生は現在、主に外部の支援機関と活動されているとのことですが、これまで企業からどのような支援を受けてきましたか?

奥田 自分は同志社大学で博士課程に在籍していたときから、産学連携で研究をしてきました。当時から、とある化学メーカーとつながりがあり、現在は京大×化学メーカーの特定研究員をしています。

久保園 現時点で必要、もしくは、今後必要になると考えている支援には、どのようなものがありますか?

奥田 お金(笑)。自由に使えるお金ですね。

久保園 やっぱり、お金ですよね(笑)。例えば「ベンチャーキャピタルからの資金調達」、「クラウドファンディング」、「研究費」など、資金面の支援といっても、様々な形がありますが、奥田先生にとって、どのような形が望ましいのでしょうか?

奥田 お金だったら何でもいいのですが、研究費となると、1期に何円までといった制限がつきますよね。なので、自分たちが自由に使える資金を得ようとすると、大学発スタートアップにこだわる必要はないのかもと思いつつ、大学発スタートアップじゃないとできないこともたくさんありますよね。

久保園 そうですね。大学発スタートアップだけが応募できる補助金などもあります。

奥田 はい。どちらもいい感じにできる方法はないかなと探っています。

京大発アントレプレナーが思う、あったらいいな京大の支援

久保園 これまで京大から受けた支援、もしくは、受けたかった支援があれば教えてください。

山本 まず、僕だけかもしれませんが、起業家という時点で、何かあっても“自分で何とかしよう”というマインドを持っていると思います。

久保園 そうかもしれません。

山本 基本的に、誰かに何とかしてもらうというマインドはあまりないので、初期の段階から、「これを助けてほしい」みたいなものはないです。

一方で、最初の立ち上げのころは、何のコネクションもないので、京大の知見を通じて、他の企業とのつながりを多く持たれている京大オリジナルのポテンシャルは活かせるのではと思いました。

例えば、僕たちは今後「まごとも」のサービスを、ビジネスケアラーに対しても届けていきたいと思っています。そういったときに、従業員にビジネスケアラーをたくさん抱えている企業に「まごとも」を紹介して、メリットをアピールしてくれる。京大オリジナルには、“窓口”ではなく“発信者”になって応援して欲しいです。

久保園 営業支援のような形でしょうか。

山本 そうですね。京大発スタートアップってたくさんありますが、設立して数年の会社がほとんどだと思うので、大手企業とのパイプはそこまでないと思います。そこで京大オリジナルに、大手企業との橋渡し支援をしてもらえるなら価値は大きいです。

久保園 ありがとうございます。山本さんは最近、「まごとも」のオフィスを、京都大学の国際科学イノベーション棟(京大、国内外の教育研究機関、公的機関、企業等、産官学連携に携わるものが、日常的・実効的な交流を図ることにより、京大を源泉とする新たな知の創造を促し、地球社会に貢献する新たな価値の創造に資することを目的として、2015年に設立。京大オリジナルも入居。)へ転居されましたね。一方で、創業初期には、京大との共同研究の実績がないため、入居を断られたと聞いております。

山本 はい、そうですね(笑)。

僕のような学生起業家って、特に最初のころは、登記場所や事務所を持っていないです。だから創業時にこそ、今、僕らが使わせてもらっている国際科学イノベーション棟のスペースなどを貸し出してもらえれば、起業家同士のコミュニティやネットワークも広がるし、起業家が増えるのではないかと思うので、インキュベーション支援をもっとしてくれたら嬉しいですね。

山本 あと、京大からの支援で言うと、弁護士をつけられたら最高だなって思います。

久保園 おっしゃるとおりですね。

山本 現在も法務の相談をしたい時には、その都度サポートしてくれる人を探しています。弁護士、会計士、社労士のような士業の方がサポート役として揃っていればすごく助かりますね。

この点については、特に最初の立ち上げのときに大変だなと思いましたし、今でもその都度探してお願いするのはちょっと面倒だなと思うので。

久保園 勝手知ったる方がいれば、気軽に相談できそうです。

奥田 私の姉は大学の先生をしているのですが、弁護士の資格も持っているので、もしよかったらお声がけください(笑)。今のお話を聞いて、ひょっとして自分はラッキーかもと気が付きました。

山本 ラッキーだと思いますよ。そういえば、僕らもちょっとラッキーなことがありました。一緒にやっている仲間に社会人の方がいたのですが、そのおかげで、社会人の観点からアドバイスをもらえたり、その方が弁理士の資格を持っていたので「まごとも」という名前の商標を取ってもらったり、いろいろと助かりました。

ただ、やはり最初の立ち上げ時は、弁護士や会計士もいるほうが強いなと思いますね。

奥田 お姉ちゃんと仲良くするようにします。

山本 今からかい(笑)!

「京大発アントレプレナー」が歩む先に、見据える未来とは

久保園 では最後に、今後の目標についてお聞かせください。

山本 僕らの会社は、“違いを楽しみあえる社会の実現”を理念としています。起業した理由には、シニアの方に活力を届けたいのもありますが、それだけでなく、若い世代に多様な価値観を知る機会をつくりたかったのもあります。

若い世代と一括りにしても、育ってきた環境が違えば、考え方も行動も全然違うわけですよね。ただ、同世代の人間同士では反発してしまうような違いも、年齢という変数が入ると、多少許容できると思うのです。シニアの方にとっても、若い世代と交流して最近の流行などを知ることは、刺激になったりしますよね。そういうふうに、自分たちとの違いを楽しみあえるのって、いいなと思っていて。

僕は「まごとも」で、今後もそれをやっていきたいなと思っています。

久保園 ありがとうございます。奥田先生の目標は何ですか?

奥田 自分は、木や家畜の骨、砂などをうまく組み合わせて、プラスチックやセラミックス、金属などに代わる材料を作る研究をやっています。中でも特に、木や竹などの植物資源に注目しています。なぜかというと、日本には石油などの資源は少ないですが、木だけは山ほどありますよね。

久保園 確かにそうですね。

奥田 木からあらゆることに役立つ素材を作ることができたら、日本は資源大国になって景気もよくなるのではないでしょうか。もしそうなると、みんなの機嫌もよくなって、犯罪やいじめも減るのではないかと思います。

子どもの頃、「バブルへGO!!タイムマシンはドラム式」という映画を観ました。あの映画に出てくるバブル時代は、偽りであったかもしれないけれど、確かに豊かだった。みんながはしゃぎ回って、平和ボケ・豊かボケでしたが、自分はそれぐらいのほうがいいと思っています。現代のつまらない社会よりも、「食べ物も、お金も、お酒も、あり余っているぜ、いえーい」みたいな。

恵まれていない方は、日本にもたくさんいるので、まずは日本を豊かにしたい。より豊かで、より平和な国に自分が住みたい。それが、自分が起業して叶えたい社会ですね。

久保園 起業の先に広い視野で世界を見ていて素敵です。京大オリジナルとしても、お二人のようなアントレプレナーを、さまざまな形で支えていければと思っております。本日はありがとうございました。


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