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【最新発明情報】表面修飾炭化ホウ素ナノ粒子を用いた中性子捕捉療法による癌治療法の開発

本質的に低毒性で、より短時間で投与可能な修飾炭化ホウ素ナノ粒子を用いた癌治療法です。腫瘍内により長時間・より高濃度でホウ素を蓄積可能で、かつ血液から迅速に除去可能です。

背景

ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy:BNCT)は、中性子とホウ素(10B)との核反応により発生するα線に基づく非侵襲的かつ副作用の少ない癌治療法です。近年の病院設置型中性子線発生装置の普及に伴い、2020年5月に保険適用が始まり、BNCTはより身近な癌治療法になりつつあります。しかし、BNCTに使用されるホウ素製剤は、分散性及び癌集積性等が不十分であり、投薬時間が長時間必要であることや、適用可能な癌種が限られる等の問題があります。そのため、新たなホウ素製剤の開発が求められています。

発明概要と利点

発明者らは、上記課題に鑑み、表面を化学修飾した新たな炭化ホウ素ナノ粒子を中性子捕捉療法用薬剤として開発しました。本発明の修飾炭化ホウ素ナノ粒子は以下の性能を有し、BNCTに好適に使用できます。

(図1)薬物動態

  • 投与後、18時間から48時間の間、腫瘍内に20 ppm以上のホウ素の蓄積を確認。
  • 血液中の修飾炭化ホウ素ナノ粒子の半減期は7.3時間であることを確認。
  • BNCTにおいて好ましいとされる、T/B比=3 以上を満たすことを確認。

(図2)本発明を用いたin vivo BNCT(マウス)

  • 修飾炭化ホウ素ナノ粒子注入し、24時間後中性子照射(BNCT 24 h)と48時間後中性子照射(BNCT 48 h)で腫瘍サイズが効率的に抑制されることを確認。

その他情報

  • 高い分散性により血栓などの急性毒性がないことを確認。
  • 一度の短時間の注射のみで十分な治療効果を確認。
図1. 本発明の修飾炭化ホウ素ナノ粒子注入後の腫瘍(T)中の10B濃度、血液(B)中の10B濃度、及び腫瘍中の10B濃度と血液中の10B濃度との比(T/B)
図2. 本発明の修飾炭化ホウ素ナノ粒子に関するin vivo BNCTの結果(腫瘍サイズ)
(n = 8, two-way ANOVA; *p < 0.05,
**p < 0.01, ***p < 0.001)

研究段階

本発明の修飾炭化ホウ素ナノ粒子を担癌マウス(結腸癌:CT26)に投与し、中性子線を照射。腫瘍サイズの経時変化をモニターし、腫瘍の成長に対する抑制効果を確認した。

適応分野

がん治療(ホウ素中性子捕捉療法)

希望の連携形態

  • 実施許諾契約
  • オプション契約(技術検討のためのF/S)

※本発明は京都大学から特許出願中です。

ライセンス契約を受けていただき 本発明の実用化を目指していただける企業様を募集しています。ぜひ、お問い合わせください。

ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy:BNCT)に使用する、表面を化学修飾した新たな炭化ホウ素ナノ粒子を開発しました。担癌マウスに本発明を投与し、本発明の腫瘍への蓄積状況や中性子を照射した際の腫瘍の成長抑制効果を確認しております。                     

京都大学産学連携担当(株式会社TLO京都)担当:田中俊介より

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