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2023年12月20日、オンラインイベント「未来の考え方を考える」が開催されました。

京大オリジナル株式会社と、株式会社三井住友フィナンシャルグループが運営するGREEN×GLOBE Partners、そして、株式会社三井住友銀行の主催にて開催しているオンライントークイベント 「open your・・・」。今回は『未来の考え方を考える』をテーマに、私たちが普段どのように未来のことを考えているのかを振り返りながら、今後を考えていくにあたってどのような方法・手段があるのかなど、ゲストの皆さまによるクロストークが繰り広げられました。

登壇者は
●論理学者であり、近年は、哲学をテーマにしたオンライン公開講義や、哲学を通じた産学連携の共同研究などにも取り組まれている京都大学大学院文学研究科特定准教授の大西琢朗氏
●幅広い未来を洞察する取り組みを通じ、主に企業の新規事業やイノベーション創出、長期ビジョンの策定などを支援している株式会社日本総合研究所未来デザイン・ラボ部長の八幡晃久氏
●「環境・社会課題解決の「意識」と「機会」を流通させる」ことをテーマに活動するコミュニティGREEN×GLOBE Partnersの運営に携わる三井住友フィナンシャルグループの山北絵美氏
司会進行役の京大オリジナル川村氏を加えた4名。今回も、この貴重なトークセッションの模様を抜粋しながらレポートいたします。

登壇者の詳しいプロフィールはこちら

“ありうる未来”と“ありたい未来”、未来の幅を広げて掘り下げていく

イベントではまず、「未来を考えるとはどういうことか」というところから、大西氏が所属する研究室の教授である出口康夫氏の言葉を挙げて話してくださいました。

大西氏「出口康夫は、『未来がどうなるか『予測』するのは科学の仕事で、我々はそれを無視することはできないが、哲学(より広く言えば人文・社会科学系の学問)に何ができるかというと、それは『提案』することだ』と言っています。つまり、我々が一体、何をしたいのか、そして、何をすべきなのか、こういうことを提案していくのが哲学にできることだと言っているんですね。これは科学だけで導かれるものではありません。ですので、未来の予測とは別に、自分がどうしたいか、どうすべきかを考えていくのが、哲学的にはまず出発点になるかと思います」

このお話を受けて、八幡氏も、

八幡氏「我々も未来を考える際は、未来をいくつかに分けて考えます。まず、一つ目の未来は、“ありそうな未来”。これは先ほどのお話にあった、科学による予測と近いと思うのですが、例えば、『今後世界の人口はこうなっていきます』とか、『気候変動により気温はこうなっていきます』というような、抗いづらい未来のことです。多くの人々や企業が、この“ありそうな未来”の周辺だけで、「今後どうしていこうかな」と考えますよね。だけど、そうではなくて、我々は、二つ目の未来として、“ありうる未来”を考えることを提案しています。これは例えば、「将来的に車の運転は、教習所の教官に教わるよりAIに教えてもらうようになるかもしれない。そのほうが、緊張やストレスなく教わることができる」というような、現時点で起こり得るかもしれない未来のこと。そうやって未来の幅を広げた上で、三つ目の未来として、“ありたい未来”を考える。この、まずは未来の予測の幅をできるだけ広げていくというのが、我々、未来に携わる支援をしている者として、こだわっているところではあります」

さらに続けて、

八幡氏「これは、いろんな未来を予測しているということなんですが、『予測』という言葉を使うと、競馬でどの馬が1位になるかを当てるような、“1つしかない未来”というニュアンスにどうしてもなってしまうので、いろんな未来がある(a futureではなくfutures)という意味を込めて、我々は、『未来洞察』という言葉を、こだわりを持って使っています」

と、“未来洞察”という概念も示しながら話してくださいました。

これらのご意見に対して大西氏も同意。お二人の議論は深まっていきます。

大西氏「先ほど私は、自分がどうしたいかを考えるのが出発点だというお話をしましたが、それってなかなかわからないんですよね。はっきりわかっているならそのまま突き進めばいいんですけど、大概の人は、それがわかっていないことが多い。自分の中をいくら覗き込んでも、そんなものは見つからなかったりする。そうなると、さっき八幡さんがおっしゃったような、まずは“ありうる未来”というものをいくつか考えて、自分の中の枠を広げてみて考えるということが必要になってくるのだと思います」

八幡氏「自分の内側を掘っても何も出てこないというのは、確かにそうだなと思います。私自身もそうですが、『君は何がやりたいんだ』とか、『どうなりたいんだ』と聞かれても、『そんなこと急に言われても・・・』となりますよね。我々は企業のビジョンをつくるお手伝いもしていますが、社員の方々に、『自社がどうなっていったらいいと思いますか?』と聞いても、皆さん真面目だから一生懸命考えてくれますけど、内心は『そんなのわからないよ』と感じると思うんです。つまり、私たちは、なりたい自分との向き合い方なんて教えてもらったことないんですよね。だから、我々のような外部の人間が、外から『こんな未来もあるかも』『あんな未来もあるかも』という具合に、たくさん小石を投げてあげるというようなことが必要になってくるのだと思っています。そうすることで、なんとなく自分の中で嫌いな未来と好きな未来が見えてきて、好きと嫌いの輪郭を探っていくと、何か形が浮かび上がってくるんですよね。その形が、『自分の中の内なる声なんじゃないの』というように、いろんな“ありうる未来”を投げかけるっていうのが私たちのやっていることなんです」

“ありたい未来”から“育てる未来”へつなげていく

さらにここで、八幡氏が“育てる未来”という考え方を紹介してくれました。

八幡氏「もう一つ、未来はやってくるのではなく育てるものだという考え方があります。身の回りの未来って自分で変えられますよね。例えば『10年後、誰と、どこで暮らしたいか』というようなことは、自分の変数として捉えられる。その自分が捉える変数の軸や領域を、どのくらい広げていくかという先に、『社会自体がどう変わっていくかに対して、自分がどう関われるか』みたいなものがあると思うんです。企業が大きければ大きいほど、できることも大きくなると思いますが、そうやって、自分で未来を変えていくとか、育てていくんだという感覚になるには、『こんな未来になったほうがうれしいな』という、“ありたい未来”が必要で、“ありたい未来”から“育てる未来”というふうにつながっていくと、その行為として、ビジョンであったり、新規事業が生まれていくというようなお話は、企業の皆さんともよくしています」

ここで大西氏が、この“育てる未来”の捉え方のポイントを、哲学者の立場から補足。

大西氏「身の回りのことが大きなところにつながっていくというのはまさにそうで、それをどういうふうに考えるかなんですよね。でもそれって結構、難しいことだとも思うんです。つまり、半径ゼロメートルのことを考えるところから、サステナビリティなどの話になると、100年、1000年というスパンの話になりますよね。いきなり結びつけるのが難しいから、こうだからこうなってこうなっていくという矢印をどんどんつなげていくという方法があるのですが、実は哲学者はこれをやっているんです。哲学者の場合は、普段の生きているということから、どんどん矢印をつなげて、最終的に存在とは何かというところまでいくわけですが・・・」

サステナビリティという言葉が出てきたところで、山北氏から企業目線で哲学を学ぶ意義、そして未来洞察の取り組みを現場に落とし込んでいく際の手法についての質問が入りました。

山北氏「GGPパートナーに対して、『サステナビリティや社会課題について、どんなことをリサーチされていますか』という質問をすると、『ウェルビーイング』、『DE&I』、『多様性』というキーワードがトップ3ぐらいには入ってきます。これらの点について、企業としてどう取り組んでいるかというと、足元では、パーパス経営などで企業の意志(活動目的)を再確認して、それに向かって社員のエンゲージメントを高めていこうとしています。やる気の出し方が高度経済成長期と変わってきたということだと思います。とにかく成長していかなければという時代から、もう少し違うもので企業への求心力を高めたり、社員の満足度を高めてもらおうという会社が増えてきているんですよね。そういう意味では、哲学や論理学を学んでいくこと自体がどう役に立つのかということも非常に興味がありますし、あとは、八幡さんが取り組んでいる企業に向けての未来洞察について、現場に落とし込むときにどんな手法を使われているのか、というところにも大変興味があります」

洞察した未来を現場に落とし込んでいくために

山北氏の質問に対して、まず大西氏から

大西氏「ビジョンとか、パーパスというのは、単独で存在しているものではないんですよね。それは何かとつながっています。大きく分けると外と内。ある会社がビジョンを掲げて『こうします』と外部に対して発信する。それは、世間一般、日本、世界で流通している考え方に沿ったものであれ、それに挑戦するようなものであれ、それらとの関係で理解されることになります。一方で、ビジョンを掲げて、『みんなでこれをやるぞ』ということを会社の中でも共有するわけですね。それはもちろん、社員それぞれの仕事についての考え方や、ライフプランみたいなものとも接続して考える必要があります。ビジョンとかパーパスというのは、ある種の価値観を表明しているものですが、それを単独で考えても意味がないんです。先ほど言ったような「矢印」をつなげていって、外と内の文脈を与えてやることで、その価値観がより多面的な形で理解されるようになります。そういう哲学の役立て方というのがあるかと思います」

次に八幡氏が、

八幡氏「我々は、いろんな未来の可能性、“ありうる未来”の可能性の幅を、いかに広く捉えるかというところに力を入れておりまして、一緒に話をする企業の皆さんに、未来の幅を広げてもらうことで、ある意味、今、思い込んでいる未来の制限とか、タガみたいなものを外していくというのを大事にしています。そのときに必要になるのが、weak signals(弱い信号)です。これは何かというと、世の中の変化が非線形的に起こるとしたときに、この非線形の立ち上がりのところにある変化の兆しのようなものです。例を挙げますと、数カ月前に22~23歳の女性の方が『大学を卒業して働き始めたけれど、9時〜17時の勤務なんて非人間的であり得ない』と涙ながらに訴えかけた動画がアメリカのTikTokに投稿され、同世代の人たちの共感を得たというニュースがありました。この話を私と同年代の仲間にすると、『それって本気で言っているの?』という反応が帰ってきます。『9時〜17時で帰れるなんて、なんてホワイトな職場なんだ』とおじさんたちは思うわけですね。でも、今の新卒の方たちにこの話をすると、『確かにそうですよね』と、共感されたりする。我々は、これをweak signalsと捉えて、『もしかしたらこれは、週休3日制の兆しなのかもしれないし、出社を強要する会社が廃れていく兆しなのかもしれない』と考える。我々は、こういったweak signalsを5000個ぐらい持っていて、さらに毎月100個ずつぐらいつくっているんです。それらを企業の皆さんにお見せして、『世の中こんなことになってんの?だったら、もしかしたら、こんな未来になるかもしれないし、うちの会社ヤバいな』とか、『今こんな変化が起こり始めてるなら、うちの会社、こんなことできるんじゃないの?』とか、いろんな“ありうる未来”の可能性の中から発想を膨らませてもらうというのが具体的にやっていることですね」

と回答。

この回答を受けて、さらに山北氏から

山北氏「個人としては、マイノリティーの考え方に共感することも結構多いのですが、一方で、企業のビジョンなどはマスにしていくことが重要です。そこのすり合わせで苦労される方が多い気がします。どうやって個人の意思を束ねていくかについて、企業とどういう議論をされていますか」

と質問。

これについて、

八幡氏「それは非常に難しい問題です。我々はもちろん、それを束ねて大きい力にしていこうと思うんですけど、途中のワークショップに参加してない役員の方から、『何じゃそれ?』って言われることも結構多いです。しかし、私自身がもうおじさんになっているので、自らも含めておじさんのことを悪く言わせてもらうと、『おじさんが理解できることばかりやっている会社に未来があると思いますか?』ということなんですよ。私が一番いいなと思うのは、『わしがわからんものを持ってきて、いいと思って一生懸命やれ』と言ってくれる役員がいる会社。こういう会社は一緒に仕事をしていても楽しいし、未来があるなと思います。でも、普通はそうでない会社のほうが多いので、そういう会社にどう寄り添うかというと、“既成事実をつくる”というのが一つの方法です。どういうことかというと、例えば、新しいアイデアを面白がってくれる他の会社の人と先に一緒にやり始めてしまって、『こういうことをやり始めました』と事後報告してしまう。そして、この取り組みを(できれば、経団連の集まりとかで)他の会社の社長から褒めてもらえるように持っていく。そうすると、会社の偉い人は、下から上に上がってくる情報よりも外から刺さってくる情報に弱いので、ゴーサインしか出ないです。本質的でも何でもなくテクニカルな話になってしまいますが、結局、ゲリラ活動なんですよね」
と、実際現場でおこなわれているテクニック論を踏まえて解説してくださいました。

では、説明責任や数値化されたエビデンスなどが求められる近年において、ゲリラ的手法以外に、言語化によるすり合わせや意思疎通などをおこなう手はないのでしょうか。これに対して、大西氏が一つのヒントを提示してくれます。

大西氏「企業として、何か面白いことを考えたとか、何かこうしたいとなったときに、それを周囲に理解してもらわないといけないわけですよね。まさに説明責任で。それは、会社から従業員に向かってもそうだし、従業員から会社に向かってもそうだし、会社から外に向かってもそうだし、全部そうなんですけど、そこの言語化というか、きちんとわかってもらうためのストーリーを組んであげることって、哲学が昔からやっていることなんです。わかりやすい言葉をつくって、明快な論理構造をつくって、それを、個人で見たらこう、会社で見たらこう、世界で見たらこう、人類の歴史で見たらこうと、いろんなスケールの下に置いて考えていく。哲学者というのは、これを延々とやっているんですね。会社で働く場合は、それを延々とやってるわけにはいかないんで、どこかで止めて行動に移るわけですけど、とにかく、何か自分の中にやりたいことがある、面白いことがある、でも、人にどうやって提示するかわからない、というときのストーリーの組み方は、まさに哲学的な考え方なので、哲学者が入って一緒に考えるというのはあり得るのかなと思います」

“自社にとって良い未来”と“世の中にとって良い未来”、対立したときは

ここで話題は、事前にいただいていた質問へ。

「学生の方からの質問:企業においての利益の達成とサステナビリティなどの社会課題の解決が対立してしまう場合、どのように取り組んでいくのが良いでしょうか」

この、自社の利益と社会課題解決の対立についての質問に対して山北氏は、

山北氏「私は入社して11年目で、この中では一番学生の方に近いので少しお話しますね。京都大学の農学部を出たんですけれども、当時うちの会社が金融機関として農業に力を入れますというようなことは言っていて入社しました。入社後10年経ったら、世の中が突然、「自然資本だ」と騒いでいるんですよね。気がついたら、同じフロアに農学部出身者がたくさんいる状況になっていまして、これは入社したときにはまったく予測していませんでした。もっと言うと、私は大学時代、山へ行って林業を手伝っていたんですが、入社したときは、林業はブルーオーシャン過ぎてビジネスの種も無いだろうと思っていたんです。それが、むしろ今は、農業より林業のほうのお問い合わせが多くなってきていると感じます。私が入社した当時に、『これからは農林業がバズると思うんでやっていきましょう』と社内で企画書を出しても通らなかったと思いますが、10年経ったら、意外と世の中と自分が一致してくることもあるのだなと。もしかしたら、この後10年経ったらまた離れていくのかもしれないんですけど。ですので、今、個人のやりたいことと企業の方針が対立していても、時間のスケールを変えていくと一致するかもしれない。さらに言うと、それを許容してくれる会社や、そのようなポジションを個人として選んでいく権利はあります。そのようにお考えいただくのが良いのではと思います」

と答えてくださいました。

次に大西氏は、

大西氏「利益とサステナビリティが対立するって言っているけど、利益ってなんやねんと。サステナビリティってなんやねんと。それを自分なりの仕方で捉えて、両立して、それで人を説得すればいいはずなので、もちろんそこにはテクニカル的にどうしようもないことはあるかもしれないですけど、まず、考えるべきは両立する理屈を考える、それを時間かけて実現していくということで、できることとできないことがありますけど、理屈はあとからでもつけられますから、大丈夫でしょう」

と、両立する理屈を考えるという解決方法を提示。

これらのご意見に、八幡氏も同意する形で、

八幡氏「私の回答は、大西先生のご意見と一緒だと思いますが、『両立するように何か考えたら?』というのが、まず第一。で、考えていくと必ず難しい壁が出てきます。『お金を出してくれてる人がいない』とか、『法律がこうなっているからできない』とか。そこで、“そのスイッチをどうやったら変えられるか”を考えるんです。『法律を変えるってどうやったらいいんだろう』→『この法律を担っている人って誰だろう』→『これを変えるにはまず世論を高めていったらいいんじゃないか』→『世論ってどう高めていったらいいんだろう』→『同じような問題意識を持っている人たちってどこにいるんだろう』、みたいな形で、これが、我々の未来デザインという考え方に近いと思うんですけど、自分がやりたいことに対して、障害になっている外部性にいかに働きかけていくかということが、やろうと思えばできることかなと思いますし、それをやり続けていると、世の中のひょんなことで一気に風向きが変わって、変わった後の世界で自社が優位に立てるってことに結果的になったりするので、いずれにしても働きかけるのは大事かなと。要するに、『考えりゃいいじゃん』と。外部にある無理な理由も、どうやって変えられるのかを考えようよということかなと思います」

と解決へ向けた具体的な道筋を示しながらアドバイスをくださいました。

そして、話題はもう一つの質問へ。

「企業の方からの質問:長期視点での事業計画で伝統的に実践されてきたのは、予測や兆しから顧客や自社が関わる市場環境の変化を読み解き自社のポジショニングを探る方法で、それでいいんじゃないかと思うのですが、望ましい未来の自社の姿ではなく、望ましい社会の姿を考える意味は何なのでしょうか」

この質問に対して、まずはGGPとして同様の課題にも取り組まれている山北氏から回答をいただきました。

山北氏「企業という存在は、自然資本とか、環境とか、そういったものの上で成り立つビークルだと私は理解をしています。産業革命以降の企業活動においては、そのベースとなっている自然資本などにダイレクトに影響を与えていたけれども気がついていなくて、影響を与えていても企業活動がゴーイング・コンサーン(継続企業の前提)だと認識していたと思うんです。ただ、実際はそうではなく、会社として認知の世界を広げていかなければならない状況に、外部環境が変わったんですよね。ですので、今の時代に、自社だけが100年後に残っていければいいという戦略を立てたとしても共感は得られないし、会社として必要な、ヒト・モノ・カネを揃えるのは難しくなっていくと思います」

次に大西氏から、

大西氏「社会的な潮流として、どうやって世の中に貢献するかということを、企業は考えないといけないというのはそのとおりだと思います。そもそも、それを考慮しない企業のポジショニング戦略って、今の時代成り立たないですよね。もちろんいつでも必要なわけではないでしょうが、考えざるを得ないときというのは出てくると思うんです。例えば事業承継のときですね。会社を次の世代に渡すとき、誰が継ぐのか、どうやって継がせるのかという問題と同時に、この会社って一体何だったんだろう、私たちってどういう存在なんだろうという、「自己」に対する問いが先鋭化してくるわけです。その中で、もう畳んじゃったほうがいいんじゃないかという選択肢も出てくるかもしれません。そういったことを考えるとき、自分がこの会社をどうしたい、この会社で何ができるということ以上に、社会の中でどういう役割を果たすべきなんだろうというのを、その会社の人だけでなく、銀行やステークホルダー、みんなが考える時期が出てくると思うんです。そういうときに、会社としてどのように振る舞うかっていうのはやはり大事になりますよね」

と、示唆に富んだお答えをいただきました。

そして、最後に八幡氏が、その企業に勤める方のマインドから企業として望ましい社会を目指す意義を示してくださいました。

八幡氏「私自身、今、働いて21年目なんですけど、入社して8年ぐらいはマシンみたいなコンサルタントだったような気がするんです。それが、ある人と一緒に仕事するようになってから人間らしく働きたいと思うようになって、それ以来そういう環境を頑張ってつくってきたつもりなんです。何が言いたいかというと、そういうふうに思っている人の数がだんだん増えてきているんじゃないかなということ。自分がやっていることが誰かにとって、本当の意味で良いことにつながっているんだなと思いながら働きたいと思っている人が増えているんじゃないかなと思います。そう考えると、自然と人が集まり、取引したいと思ってもらえる会社に求められる姿勢というのはどういうものか、自ずと見えてきますよね」

今回も時間いっぱいまでトークは続き、最後はゲストの皆さまのコメントをいただいて、イベントは終了となりました。『未来の考え方を考える』というテーマでおこなわれた90分間のトークセッション。今回は、あえてサステナビリティ推進のHOWや具体論に踏み込むことなく、「未来の考え方」というところを掘り下げて議論を進める形でしたが、皆さまが、個人または企業の今後を考えていく上での、切り口やヒント、参考となる方法論などは見つかりましたでしょうか。本イベントが何らかの変化をもたらすきかっけとなっていれば、大変うれしく思います。

未来を模索している企業の皆さま、
京都大学にぜひご相談ください!