topics

「従来のやり方では新しいものは生まれない」と感じたらPhilo-へ!京大研究者との対話からはじまる未来。

京都大学には、産学連携に関わる事業子会社として、京都大学イノベーションキャピタル株式会社(ベンチャーキャピタル、以下京都iCAP)、株式会社TLO京都(特許・知的財産活用)、そして京大オリジナル株式会社(コンサルティング、研修・講習サービス)の3社があります。

今回、この3社の共通窓口として「産学連携情報プラットフォームPhilo-」をオープン。京都大学とのコラボレーションに興味がある企業との連携・共同プロジェクトを、より円滑に進めていこうとしています。京都大学が目指す”京大らしい”産学連携のあり方について、Philo-企画推進を担当する、京大オリジナルの川村健太さんに話していただきました。

【聞き手:杉本恭子(ライター)】

社会と「京大の知」のコラボレーションを加速するために

——はじめに、「産学連携情報プラットフォームPhilo-」を立ち上げた背景について聞かせてください。

川村:2018年6月の京大オリジナル設立当時から、企業との接点のもち方として、「京大らしさを伝えることを通して、興味をもってもらう方法はないだろうか」と考えていました。設立時には姉妹会社である京都iCAP・TLO京都がすでに存在していたものの、企業への提案活動も個別で実施していたので、今回はまず情報発信の部分でPhilo-という共通の窓口をもち、マーケティング活動を一緒にやっていこうとしています。

——窓口を一本化すると、企業のみなさんも気軽に問い合わせられそうですね。

川村:実は、私は前職で企業側の産学連携を担当していた経験があります。当時、「京大ともっとオープンイノベーション的な連携ができないだろうか」と模索していたのですが、産学連携の初心者としては適切な問い合わせ窓口に迷うところもありました。漠然と大学との連携を模索している段階では、「どの分野に可能性があるのか?どの研究者がいいのか?」をイメージしきれない部分もあるので、もっといろいろな情報にアクセスしやすかったら良いなと感じていました。

これまでのTLO京都が推進してきた知的財産を世の中に広めていく活動、京都iCAPが推進してきた投資活動や各種共同研究などは、出口は異なるかもしれませんが研究成果の事業化という点では目的は同じだと感じています。また、企業側としては「何か新しいことをしたい」という課題解決につながるのであれば、出口にこだわらないこともあるかと思います。

なので、今回のPhilo-の活動は、各京都大学子会社にとっても、産学連携を模索する企業にとっても、気軽に連携を模索する機会が増えるきっかけになればと思っています。

また、私は京大の卒業生でもあり、京大にはユニークな研究者が大勢いることを知っています。「京大の研究者と連携して、何か面白いことをやりたい」というくらいざっくりした相談ができれば、もっと可能性が広がるのに、もったいないなという気持ちもありました。こうした自分自身の経験からも、企業から京都大学へのアクセスを良くしたいと思っているんです。

学問を通して培われた研究者のユニークさに触れてほしい

——京大オリジナルは、産学連携におけるコンサルティングだけではなく、京大の研究者による研修・講習もプロデュースしていますね。京大の研究者と関わるなかで、どんな魅力を感じていますか?

川村:自分が大学院生だった頃は、卒論や修士論文のテーマ、研究内容以外で、先生方とじっくりお話をする機会を積極的に設けなかったことを今は後悔しています。(笑)社会人になってから、改めて先生たちとお話しすると、研究によって培われた考え方にすごく惹かれるなと感じます。先生方の考え方や人としてのユニークさに触れていただけたら、たくさんの人の人生がもっと豊かになると思うんです。

社会に対して熱い思いをもっておられる先生方や、一度聞いただけでは簡単には理解できないことを仰る先生方もいます。そういう先生方から、私は実に多くのヒントを頂いています。逆に自分がすぐに理解できないことにこそ、自分にとって意味があるとも感じています。

また大学にも、社会的な課題、イノベーション、教育の問題など、学内だけでは解決できないテーマがたくさんあります。企業のみなさんと大学の研究者が一緒に考えることで、社会課題の解決にもつなげられるのではないかという思いもあります。

——「京大らしさ」というのも、京大との産学連携でキーワードになりそうです。

川村:同じ分野の研究者はもちろん他大学にもいらっしゃるわけですが、研究に対してユニークな考え方をもっていたり、研究以外の部分でもおもしろいことを考えている研究者がいることが京大の強みのひとつだと思います。

もともと、京大は二番目の帝国大学として、東京大学とは異なる「自由な学問研究と学生の自主性を重んじる教育システム」を特徴として設立されたと言われています。そして、「自由の学風」のなかで面白いことをして、そのなかからノーベル賞受賞者を輩出しています。今も京大の研究者、そして京大を志望する学生にもそういう気風が残っていると思います。

従来のやり方から脱却したい企業とコラボレーションしたい

——研究内容でのマッチングだけでなく「この人と一緒に考えてみたい」という部分も大切にされているんですね。

川村:そうですね。今、多くの企業はどうしても短期的なスパンで判断せざるを得ず、市場やニーズを調査して新しいことをしようとしても、競合との競争優位性を出せないことに悩んでいると思うんです。むしろ長期的かつ普段とは違う視野に立つことで、今までにない発想が生まれる可能性があるはずです。対話を重ねながら新しいものを紡ぎ出していくことを重んじる京大の研究者は、社会からも求められているのではないかと思っています。

——京大との産学連携にマッチする企業の具体的なイメージはありますか?

川村:先が読めない時代のなか、計画的にものごとを進めていくことに行き詰まりを感じていたり、競争優位性を出すために従来のやり方から脱却したい企業には、ぜひ声をかけてほしいと思います。

「世の中にないものを生み出すには、会社の評価制度では測れないユニークさをもつ人も許容して、社内のダイバーシティを確保する必要がある」と考えている企業と、京大は合うのではないでしょうか。私が携わらせてもらっている「京大変人講座」の酒井敏先生(人間・環境学研究科)は「イノベーションは『ガラクタ』から生まれる」と言われています。京大の良さは、一見役に立たなさそうであったり、遠回りに見えたりすることから生まれる偶発的な要素も大事にするところ。そういう考え方に共感してくださる企業と、我々もぜひコラボレーションしたいと思います。

今後、Philo-を通して、企業の皆様とも京大らしい「対話」をしていけたら良いなと思っています。


川村 健太
京大オリジナル株式会社 ナレッジプロモーション事業部長

京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻修了後、組織・人事系のコンサルティング会社に入社。組織風土改革、組織診断、人事制度構築などの各種組織開発案件、人材開発案件に従事。
その後、事業会社にて、経営企画、インキュベーション業務に従事するなかで産学連携を担当。大学発ベンチャーとの連携、共同研究の企画にも携わる。その他、新規事業の探索・推進、事業提携・M&Aの推進、戦略立案、各種業務プロセス改善等、幅広い業務に携わる。2018年京大オリジナル株式会社設立に合わせ入社。「京大の知」のアウトリーチ活動、各種セミナー企画、企業連携施策の推進、大学の知の事業化など、複数の案件を担当。京大らしい産学連携の方法、これまでにない新しい取り組みを日々模索中。

未来を模索している企業の皆さま、
京都大学にぜひご相談ください!