TEL×CIREDS×KUO
東京エレクトロン株式会社にて
データサイエンス教育発展についての意見交換会
京大オリジナル株式会社(主催)と京都大学国際高等教育院附属 データ科学イノベーション教育研究センター(共催)にて実施しております「京都大学データサイエンス講座」。
通常は、講義の録画配信とライブ配信で展開している講座ですが、この度、東京エレクトロン株式会社との間で“教材買取”という形でのお付き合いがスタート、現在、初級編にあたる「文系のための統計入門講座」を社内の人材育成の教材としてご活用いただいております。
そのような経緯から、この「京都大学データサイエンス講座」を導入いただいた企業様の視点での本講座に対するご意見やご要望、さらには、データサイエンス人材を育成していく上での課題や今後への期待など、広くお話をお伺いするべく、北海道は札幌にある東京エレクトロンのDX拠点「TEL デジタル デザイン スクエア」を訪問させていただき、意見交換会をおこなってまいりました。
今回は、その様子を一部抜粋しながらレポートさせていただきます。
■参加メンバー
東京エレクトロン
魚山 和哉(アプリケーション開発一部 部長)
平井 有希(DX企画推進部 DXスキル開発グループ グループリーダー)
斉藤 友貴哉(先端技術開発一部 エッジソリューショングループ グループリーダー)
志賀 正浩(先端技術開発一部 エッジソリューショングループ)
小林 大(先端技術開発一部_自律制御グループ)
京都大学国際高等教育院 附属データ科学イノベーションセンター(CIREDS)
山本 章博(センター長 / 国際高等教育院 副院長 / 情報学研究科 教授)
田村 寛(教授)
瀧川 一学(特定教授)
植嶋 大晃(特定講師)
京大オリジナル株式会社
川村 健太(ソリューションデザイン部 部長)
中澤 舟(プロジェクトマネジメント部 プロジェクトディレクター)
【東京エレクトロンについて】
東京都港区に本社を置く半導体製造装置メーカーで、さまざまな半導体大手企業に装置を納入している。設立は1963年11月。もともとは技術専門商社で、海外で作られた半導体製造装置を輸入販売していたが、現在は、開発から製造まですべて自社でおこなっている。売上の8割以上が海外で、半導体製造装置のシェアは世界第4位、国内では第1位。さらに近年のAIの普及、およびそれにともなうデータセンターの需要拡大により、順調に売上を伸ばしている。
ソフトウェア開発拠点の一つとして1991年から北海道札幌市で活動していたが、2020年にAI・データサイエンスの拠点「TEL デジタル デザイン スクエア」として再構築した。
【京都大学国際高等教育院附属 データ科学イノベーション教育研究センターについて】
2017年4月に、情報学・統計学・数理科学に関する教育およびこれに必要な調査研究などをおこなうため、京都大学国際高等教育院に設置された組織。京都大学に在籍する教員が連携し、情報学・統計学・数理科学に関する基盤教育を、学部から大学院まで効果的に提供できる体制を整備し、データ科学者の養成や第4次産業革命をトップレベルで支える人材育成をおこなうことを目的としている。文部科学省による「数理及びデータサイエンスに係る教育強化」拠点校に選定されており、予算措置を受けた2017年度には、従来から開設してきた「統計入門」や「数理統計」等に加え、学部・大学院のニーズを踏まえた開設科目を具体化。カリキュラム整備・科目の設計などをおこなうとともにe-learning教材を開発し、2018年度からは体系的な情報学・統計学・数理科学教育を展開。また、「数理・データサイエンス・AI教育強化拠点コンソーシアム」の立ち上げ構成員でもあることから、積極的な情報提供や役割分担などを通じて、全国的なモデルとなる標準カリキュラムや教材の作成にも貢献している。
【京大オリジナルについて】
京都大学がその研究成果の活用を促進するための事業会社として2018年6月に設立。コンサルティング事業(産業界との技術シーズ連携を進めるマッチング支援や大学側の技術シーズを発信するマッチングイベントなど)と研修・講習事業(企業幹部等の特定層向けの専門講座や科学技術、文化芸術等、一般層に向けた教養講座)を軸とし、京都大学の「知」を産業界や社会に循環させて収益化を図り、その収益を還元することで教育研究活動をさらに活性化させることを目的としている。また、他の京大子会社と連携し、産学連携の情報発信などもおこなっている(産学連携プラットフォーム「Philo-」)。
※東京エレクトロン側の話者を TEL
京都大学国際高等教育院附属 データ科学イノベーション教育研究センター側の話者を CIREDS
京大オリジナル側の話者を KUO として表記します。
CIREDS/KUO→TEL データサイエンスについての動画教材を導入した経緯は
KUO 我々の「京都大学データサイエンス講座」を社員教育の教材として導入していただいたきっかけについてお聞かせいただけますか。
TEL 世の中の潮流として、今DXというものがすごく言われておりますが、例に違わず弊社でもこれに取り組んでおりまして、『全従業員がデジタル技術を“てこ”にして付加価値向上や効率化などの企業価値創造活動を持続的に推進するグローバルカンパニー』というDXビジョンを掲げて推進しているところなんですね。
少し人材育成の話になりますが、私たちはDX自体を成功させるためには、まず組織能力を高めることが必要であると捉えておりまして、そのためには“現場の担当者の専門知識”と“デジタルやデータの基礎知識”を掛け合わせることが重要と考えています。
弊社のドメイン知識はエンジニアが何年も時間をかけて身につけていくレベルのものですので、今いる現場の担当者にデジタルの基礎知識をしっかり身につけてもらうことも重要と捉え教育を行っています。その一環として今回、現場のエンジニアにデータサイエンスの基礎知識を身につけてもらう教材として「京都大学データサイエンス講座」を利用させていただいております。
CIREDS 我々は当初から「統計入門」などの科目をいくつか開講しておりますが、他の大学さんにも買っていただけるようにそれらの講義内容を教材化して全国展開をするということもやっていたんですね。それが2022年に、文科省のほうから「企業とも連携して、データサイエンスやデジタル人材を育成していきなさい」という方針が出たものですから、そこから京大オリジナルさんにも協力いただき、産業界にも展開できるスキームを用意してもらって今回のような講座を一つずつ作ってまいりました。
「統計入門」から「文系のための統計入門講座」という統計検定®3級向けを作り、次に2級向け、データサイエンス基礎、現在はデータサイエンス発展の講座を製作中なんですが、そういうものを作りながら、産業界の方々にも利用していただくために、京大オリジナルさんにも随分と営業活動をしていただいておりました。そうしたところ、東京エレクトロンさんのほうで、教材買取という形で導入していただけるというお話をいただきまして。現場レベルの方々に使っていただいているということで、データサイエンスの裾野が広がっていくという意味でも我々が文科省のほうから言われておりますミッションを達成できることにもつながりますし、大変うれしく思っております。
CIREDS/KUO→TEL 数ある動画教材の中から「京都大学データサイエンス講座」を選んだ理由は
KUO 「京都大学データサイエンス講座」を導入するに至った背景に関して、先ほどのお話の他に、もし補足的なお話があればぜひお伺いしたいと思うのですが。
TEL 学びへのモチベーションは一般的に行くと、自ら積極的に学ぶ人2割、中間層6割、言われてからやる人2割といわれていますが、自ら学んでくれる人には年額制でいろんなコンテンツを好きなだけ見られるようなサービスを提供するほうが効果は出ると思うんですね。自分で調べて学んでいけば、次々お勧めの講座が上がってくるので。でも、そういう人たちは放っておいても大丈夫なんです。
必要なのは、それ以外の人たちの知識を底上げしていくことなのですが、やはり全員に年額制のサービスを提供するのは企業としてコストパフォーマンスを考えると難しいところがありました。
でも、今回のような講座コンテンツを買取でご用意いただけると、最低限の必須教育として「とりあえずこれだけは見てください」と社員全員に配れるため非常にありがたかったです。
また、自ら積極的に学ぶ人2割以外の人たちの知識を引き上げていこうと考えると、一人ひとりのレベルに差がありますので、あまり簡単過ぎてもいけないし、難し過ぎてもダメで。その点、統計検定®3級向けの「文系のための統計入門講座」は、まさに私たちが求めていたものでした。
それと、質が保証されているという点も大きなポイントでした。実は当初、YouTubeなどにUPされている教材なども検討していたのですが、出元が不確かものを教材として使用することが難しかったです。
CIREDS 我々もこの講座を開発し始めたときに、質の保証をどこに置こうかという議論はずいぶんと重ねまして、統計質保証推進協会さんと組もうということになったんですね。
統計質保証推進協会は、統計学の普及を推進する協会で日本統計学会がバックにあり、検定試験もおこなっています。ですから、その検定試験の内容に準拠し、あとは京大の授業もミックスしていけば質の保証はできるだろうと考えたんです。
また、講座自体を質保証推進協会の検定に対応した内容にすることで、受けていただく方も明確な目標ができるような立て付けになっております。
質保証推進協会からレジスタードのマークもいただいておりますので、1人でも多く検定を受けもらいたいという思いもあるのですが、御社としてはいかがでしょうか。社内で受験料を補助される制度などはあったりするのでしょうか。
TEL 工場のほうで現場のエンジニアにはQC検定®3級を取得してもらっています。受験料を会社が負担し、資格取得を推奨しています。今回の講座を受けてもらった後も、実際に新入社員やまだ資格を持ってない人には受験を勧めていくつもりですが、統計検定®に基づいた内容になっているのも、私たちが「京都大学データサイエンス講座」を選定させていただいた理由でもあります。
CIREDS/KUO→TEL 「京都大学データサイエンス講座」の社内の受講者の声は
KUO 「京都大学データサイエンス講座」について、社内の受講者から感想やご意見などは寄せられていますでしょうか。
TEL 受講者のアンケートを取っているのですが、「資料に書き込みながら解説をしてくださる内容が非常に分かりやすかった」という意見が上がっています。普通の講座などではスライドを流すだけというような内容のものが多いので。PDFをもとに先生が書き込んでいく授業で、ときには図を描いたりしながら解説してくださる点が非常に分かりやすかったという感想が多かったですね。
一方で、「もともとのPDF自体の文字が多かったので、もう少し図解などを交えてもらえるともっと分かりやすくなるかも」という声はありました。
CIREDS なるほど。テキストは極力減らして、フォントも普通のドキュメントをそのまま写したようなものではなく、きちんと訴求したいポイントの文字にメリハリをつけながらレイアウトしたほうがいいかもしれませんね。
TEL あと、統計検定®という題目から外れてしまうかもしれませんがこういう声もありました。「現場のエンジニアとして実業務では「実験計画法」や「分散分析」を扱うケースもあるので、3級の範囲外ですがそういった部分も講座で取り上げてもらえると助かる」というものです。
CIREDS 「分散分析」は2級のほうに入っていますが、「実験計画法」はなかったですね。確かに「分散分析」は「実験計画法」と一緒に教えたほうがいいと思うので、そういう授業があってもいいかもしれません。
「QC検定®では「実験計画法」や「分散分析」の知識も問われるので、製造業においてはニーズが高いでしょう。」そう考えるとQC検定®2級に対応した講座などがあれば、割とフィッティングがいいのかもしれないですね。我々がそれを用意できるのかという問題はありますが、一回考える余地はありますね。
CIREDS/KUO→TEL 企業として他にどのような講座があれば導入したいか
CIREDS 今後はこういう講座もほしいとか、そういったニーズはあるのでしょうか。
私どもの周りの話で言いますと、文科省から「ITパスポート試験を毎年100万人に受けるようにしなさい」と言われていたり、我々の中でも「高校で必須化された情報ⅠとITパスポートって似てるよね」という意見があったりして、ITパスポートに対応した講座をつくろうかという声は以前から上がったりしているんですが、企業の方に聞くと「ITパスポートぐらいは自力で取ってほしい」という声もあったりして、どこまで本気で取り組んでよいのか計りかねているとこもあります。
TEL ITパスポートは取ってほしいと考えています。あと数年すると、その情報Ⅰを学んできた学生が入社してくるんですよね。若い世代の社員たちと、今社内にいる人たちとの会話がかみ合わなくなるのは非常に問題だと思っていまして。指導する人より、下の世代の方が詳しくなる可能性があり、指導する人たちのリテラシーを向上するべく、情報Ⅰを学んできた学生が入社してくるまでに指導する立場の人たちには、ITパスポートレベルの知識は身につけてもらいたいですね。
CIREDS もちろんITパスポートに対応した講座ができたら買取形式でもご用意したいと思うのですが、ITパスポート資格取得用の講座は他にもありますよね。後発の我々が、どうやって競争力をつければよいか、助言があればぜひお願いします。
TEL コンテンツの質の良さ”という点は差別化ポイントになるのではと思います。おっしゃるように、ITパスポートレベルだと動画を配信しているYouTuberが結構いたり、IT企業さんが自社の研修用に教材を作っていたり、特に質を重視せずに作られているものもたくさんあるので。ただ、受講する側としては、ある程度しっかりした内容で教えたいと思うはずですので、質のよさで売っていただくのであればすごく欲しいと思います。
CIREDS/KUO→TEL 講座受講以外のデータサイエンス人材育成の方法として
CIREDS もう一つ、これは少し売り込みになってしまいますが、私どものほうでは、企業の方々に授業を受け持ってもらい学生に教えていただく「データサイエンススクール」というものも開催しております。
企業の方にデータ科学関連の講義をおこなっていただくことで、学生の段階からIT人材を発掘していこうという試みでして、授業のない土曜日に単位というしがらみがない形で、本当に興味のある学生を掘り起こしていくというような取り組みもさせていただいおります。
スポットの講義ですと、午前と午後合わせて3時間。3コマ分の授業を企業の方におこなっていただくのですが、授業が終わった後には、興味を持った学生に向けた業界説明もおこなうなどして、参加いただいた企業のリクルーティングにもつながるよう配慮しております。実は結構人気でして毎年50名近い学生が受けてくれます。
我々もよく感じるのですが、結局人に教えるのが一番の学びになるんですよね。ですので、若手から中堅にいくようなデータサイエンス人材をもう1ランク上に押し上げようというときに、こういう場を活用いただくというのも視点としてありなのではないでしょうか。仮に1日3コマの授業を1人でするのが大変でも、例えば2人で協力すると意外とできますし、我々が講義のやり方を助言することも可能ですので、もし興味がございましたらぜひお願いいたします。
TEL→CIREDS/KUO 動画教材をつくる上でのポイントは
TEL 弊社では他にもいろいろなウェブベーストレーニングをおこなっており、装置の基本的な仕組みやプラズマの物性などを学んでもらっているのですが、動画で教育できる部分とできない部分があるんですよね。その違いは何なのかいつも考えているのですが、動画教材作りのコツや、押さえておかなければいけないポイントなどがあればお伺いしたいです。
CIREDS やはりオンデマンド形式のほうがいいと思います。動画を見ておいてもらって発生した質問に答えるという、大学では反転授業と言いますが、そのほうが恐らく大人には合うでしょう。18歳ぐらいの学部生ならみんなでわいわいやるスタイルのほうが合う場合もありますが、少なくとも大学院生以上だと自分のペースでやりながら、分からないところは自分で検索しながら見るほうが身につくと思います。この、「自分で検索する」というのが何よりも学びになるので、そういう部分を考慮した動画になっているといいですよね。
TEL 我々がウェブベーストレーニングで教育をしている社員の中には、理論としては理解できてもそれを実際の業務に転用できない人が多く、その間をどう埋めるかいつも苦労しています。そこで最近取り入れているのがコンペ形式の教育なのですが、例えば装置から出てくるような模擬データを用意して、機械学習モデルの精度の高さを社員同士で競い合ってもらいます。そうすると自分で調べたりしながら試行錯誤することになるので、だんだん理論と実際との溝が埋まっていくんですよね。
CIREDS ビジネススクールなどの講座では、自分1人でやる課題とチームでやる課題があって、このチームでやる課題が実は大変学びになるんですよね。自分が苦手な分野でもチーム内にはそれが得意な人もいて、互いに分担したり教え合ったりすることで課題を進めていけるんです。このようにチームで何かをやっていくのも教育としては大事ですよね。
データサイエンスについても、全員がコードを書ける人である必要はないと思うんです。コードに詳しい人を知っていること、それらの人とうまく人間関係を構築できることも大切だし、組織の中では、リーダーシップをとっていける人やデータを見て新しい視点を投げかけられる人も重要で、そういう人材をマルチに育てていくという意味では、チームタスクは捨てられないんじゃないかと思いますね。
TEL 弊社でも、全体的に取りまとめるプランナーがいたり、方向性を決めるディレクターがいたり、もちろんデータサイエンティストっていう役目の人もいるし、工場で物性を扱っている人もいる。こういうふうにいろんな人が集まって議論し高め合っていくというのが結局は近道なんですかね。
CIREDS 底力は付いていくでしょうね。また、いろんな人が集まり議論しながら高め合っていくためには共通の目標があることもポイントなので、先ほどおっしゃったコンペ形式を取り入れるというのは大変有用なのではないでしょうか。
CIREDS/KUO→TEL 今後データサイエンス教育を進めていく上で企業に求めること
KUO 企業としてDXの推進や必要な人材を育てていく上で、また、京大側が文科省から求められているデータサイエンス教育を進めていく上で、互いにできることなどをお話ししたいと思うのですがいかがでしょう。京大側から企業に求める、または、企業から大学側に求めることなど、自由に意見交換できればと思います。
CIREDS さきほどのデータサイエンススクールの話につながりますが、我々大学の教員は、実際の企業などで扱われているデータを見る機会が多いわけじゃないですよね。産学連携で企業と一緒にやっている先生は別ですが、こと教育の現場となるとそういう面があるので、確かにこのデータサイエンススクールのようなところで、現場で実際のデータに触れ、それを利用している企業の人たちに、大学では見逃されそうな、例えば“現場のあるある”のようなものなどを学生に教えていただけると、リアルな教育ができますよね。
同じ統計の基本を教えるにしても、大学ではどうしても教科書的な授業にならざるを得ませんが、一方で、現場で日々データを見ている人のほうが、現実なデータをより感覚的に、肌感覚として捉えているのではないかと思いますので、そういうところからのフィードバックを大学にも共有していただけると、交流の在り方として非常に意義のあるものになると思います。
TEL 確かに、実際の社会実装なども含めて考えていただく上でも、現場のデータを扱っている立場としてお役に立てる部分はたくさんあるんじゃないかとお話を聞いていて思いました。
「人が測定するデータにはこんなにばらつきがあるんだ」とか、「同じ装置でもパーツ自体の経時変化があるので、それを抜いてモデリングしないといけない」とか、そういうのも感じていただけるようなコンテンツも用意できるのではと感じています。
TEL→CIREDS/KUO 今後データサイエンス人材を育成していく上で大学に求めること
KUO 逆に企業サイドから、大学やアカデミーに求めること、もっとこうしてほしいというようなご意見やご要望などがあればお伺いしたいと思います。
TEL これは大学側に求めることではないかもしれませんが、学習にはいくつかのステップがあると思っていまして、まず学問理解、例えば統計なら統計を理解すること。その後に、それをソフトで扱えること。そしてそれを実務に活かせること。これらひとつひとつにハードルがあると感じています。
学問として内容は分かってもそれを使いこなせない人がいて、使えるけれど実務でのイメージができない人いて、そういうギャップがいくつかあるんですよね。そこをどうにかできないかといつも思っているのですが。
CIREDS 統計などを含む数理理論をソフトウエアというツールに焼き付けるというところにギャップがあるというのは、大学の教員も悩んでいるところだと思うんですね。
京大でも理系の1回生の授業などを受け持っていると実感するのですが、数学自体はほとんどの学生が理解できても、それをソフトウエアに書いて動かしましょうとなると、できる子とできない子で大きな差ができ始めるんです。自分が勉強してきた理屈をソフトウェアに焼き付けるというのは、ちょっと違う能力なんですよね。かといって、小学校のころからソフトウエアで全部教えろというのも横暴だと思いますし。
TEL まさに今回の講座を買取で導入させていただいたのは、ソフトが用意されている状況で出てきた数字を正しくジャッジできる能力を身につけてもらうためでもあるので、そういった企業の実務と学問の共通する部分をどんどん大学側で担っていっていただければ、より即戦力となるデータサイエンス人材が育っていくのではないでしょうか。そのために、企業としても現場での実務につながる部分のフィードバックなどで協力させていただければと思います。
今回は、「京都大学データサイエンス講座」へのご意見やご感想のみならず、動画教材を制作する上でのポイントや今後のデータサイエンス人材育成についてのお話など、広く意見が交わされ、大変有意義な時間となりました。
これからも京大オリジナルと京都大学国際高等教育院附属 データ科学イノベーション教育研究センターでは、他の企業様ともこの度のような貴重な交流を継続し、開設している講座のブラッシュアップや今後のデータサイエンス教育の発展・促進につなげていきたいと思います。
※統計検定®は一般財団法人統計質保証推進協会の登録商標です。
※QC検定®は一般財団法人日本規格協会の登録商標です。